知財農業

  • 知財農業とは
  •  知財農業とは、農業分野における知的財産を適切に保護し、その知的財産を上手に活用することにより、 日本の農業におけるアグリビジネスの成長を推進する取り組みです。
     日本の農産物は「高品質」・「高付加価値」・「安心・安全」と国際的に高い評価を得ています。 これは各地域の技術センターや研究機関、農業者や生産者などが時間と労力と費用をかけ育成した成果物であり努力の賜物です。そこには、育成者や生産者の高い「ノウハウ」・「技術力」・「開発力」・「ブランド力」などの「知的財産」が存在しています。
     弊所では、その「知的財産」の管理方法や権利化に関して、具体的なアドバイスを提案するとともに、権利取得のために必要な手続きを行ないます
      
     弊所所長の吉田芳春が監修のもと、JA全中(全国農業協同組合中央会)より「知財農業・入門ガイド」が公表されています。 このパンフレットでは事例を挙げて分かり易く知財農業を解説しています。
     画像をクリックでダウンロードできますので、是非ご活用ください。
  • 農業分野における知的財産財産
  • →各知的財産の項目をクリックすると詳細情報が表示されます。
    育成者権 営農秘密 商標権・地域団体商標権 地域特性 キャラクタ デザイン 新しい技術

    育成者権(品種登録)

     育成者権とは、種苗法に基づいて登録した新品種(登録品種)を一定期間(保護期間は登録日から25年、果樹等は30年)、育成者が独占的に利用できる権利です。 また、種苗の利用を他者にライセンスすることで、ライセンス料を取得することもできます。
      
     品種登録は国内でのみ有効な権利です。海外においては、保護が必要な国ごとに出願・登録が必要になりますので、海外での品種登録も重要になります。
     ■品種登録の登録例
      
     例えば、いちごの「とちおとめ」などがあります。
     とちおとめは「久留米49号」に「栃の峰」を交配して得られた実生から選抜・育成した品種です。

     育成者権は2011年11月22日期間満了。

    営農秘密

     営農秘密とは、農業を営む者が有する育種方法や栽培方法などの生産技術に関するノウハウです。ノウハウは、不正競争防止法に規定する要件を満たすと、 営業秘密や限定提供データなどの「知的財産」として保護されます。
     ■農業現場における、知的財産として保護すべきノウハウ等の例
     

    出典:農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドラインについて(農林水産省2020.10.22)

     ■「生産技術に関するノウハウ等の実態把握のため」平成29年7月から8月に農林水産省が農業者などを対象にしたアンケート調査結果

    出典:農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドラインについて(農林水産省2020.10.22)

      
     アンケート結果から、農業者は土づくりの手法、施肥の手法や育苗の手法など農業生産に関する様々なノウハウがあることを認識しているものの、 そのノウハウの管理を行なっていない実態が明らかです。
      
    弊所では、知的財産として保護すべき農業生産に関する様々ノウハウについて、その管理方法や権利取得方法を支援・サポートいたします。
    ■農業生産に関するノウハウの認識と管理

     

     営農秘密の管理体制 
       営農秘密の漏洩を防ぐ管理として、誓約書、秘密保持契約や営農秘密管理規程などの締結が挙げられます。ここでは、農業者が行なう管理体制について、「誓約書」を例に説明します。
    【誓約書】
     署名のみで簡単に取得するものであって、「秘密を漏洩しない」と意識させるための書面です。誓約書には、守りたい事柄を記載して、秘密を漏洩しない旨を記述し、日付、住所欄、氏名欄等を設けておきます。
     誓約書は、例えば自己の圃場に視察を受け入れる際に必要になります。視察の受け入れは、相手方が営農秘密を知り得ることができるため、圃場内の撮影禁止、種子や種苗の採取の禁止などの約束をします。 誓約書が必要な方は弊所までお問い合わせください。
    誓約書(例)

    商標権・地域団体商標権

    ■商標権
     商標権とは、商標法に基づいて登録した商標(商品やサービスに付された商品名やサービス名、ロゴ等)を独占的に使用できる権利です。商標権は更新により半永久的に継続可能です。
     農産物のブランディングには商標登録が重要になります。商標登録により期待される効果は以下のとおりです。
      
    1.自己と他人の商品やサービスを区別させるための目印になる。
    2.同一の商標が使用されている商品やサービスは、同一の生産者や販売者の商品やサービスであることがわかる。
    3.同一の商標が使用されている商品やサービスは、品質やサービスの質的において同一であること示すことから、消費者や取引者は安心して購入することができる。
    4.宣伝や広告により商標を大々的に使用することにより、その生産者や販売者の商品やサービスであることを消費者や取引者に伝えることで、商品やサービスの購入を促進させることができる。
    ■ブランディング
     ブランディングとは、消費者や取引者が商標に触れたときに、瞬時にその商品やサービスの特徴や魅力、また生産者や販売者をイメージされる状態にするための継続的な活動です。
    ■ブランディングの事例
     ブランドディングの例として、いちごの「あまおう」と「とちおとめ」を比較して、商標登録と品種登録について説明します。
     <商標登録>
        
    ブランド名登録商標商標権者権利存続期限
    あまおう全国農業協同組合連合会更新により権利継続可能
    とちおとめ未登録
     <品種登録>
        
    ブランド名登録商標商標権者権利存続期限
    あまおう福岡S6号福岡県2025年1月19日
    とちおとめとちおとめ栃木県2011年11月22日
    期間満了
     ブランド名「あまおう」については、商標登録(あまおう/甘王)により商標権を取得しています。種苗については、品種登録(福岡S6号)により育成者権を取得し、それぞれ権利によって保護されています。
     商標登録は更新することにより永続的に使用することができますので、一定の範囲内で品種改良した場合も、「あまおう」のブランド名の使用が可能であり、また、いちごを使った加工品においてもブランド展開が可能です。
     一方、「とちおとめ」は、栃木県内産地の生産基盤を十分に確立したのちに県外へ栽培許諾を行ないました。全国に広く生産流通させることで知名度を高めるというブランド戦略であったため、 商標登録はせず品種登録のみ「とちおとめ」を登録し、結果として全国生産量一位の品種となり現在も高いブランド力を持っています。(引用:栃木県における知的財産活動の概要/平成29年3月特許庁)
     上記の事例では、ブランド名を品種登録とするのか、または商標登録とするのかによって異なったブランディングが行われています。
      
    弊所としては、ブランド展開の柔軟性の観点から品種登録と商標登録のネーミングは別々の名前を使用し、ブランド名は商標登録によって保護することをおすすめします。
    ■地域団体商標
     地域団体商標とは、登録された地域ブランド名(地域名+商品(サービス名)を独占的に使用できる権利です。地域ブランドを保護することにより、地域経済の活性化を目的とした制度です。
     ●地域団体商標のポイント

     □商標の構成態様
      
    ・商標が文字のみであること
    ・「地域の名称」と「商品名」等の組み合わせであること
    ・商標の構成文字が図案化されていないこと
    ・商標全体が普通名称でないこと
     □出願人の要件
      
    ・事業協同組合等の特別の法律により設立された組合
    例)農業協同組合、漁業協同組合等
    ・商工会・商工会議所・NPO法人・これらに相当する外国の法人
     <地域団体商標の登録例>
        
    登録商標
    登録番号
    指定商品商標権者
    稲城のなし
    (いなぎのなし)
    第5002134号
    東京南農業協同組合
    有田みかん
    (ありだみかん)
    第5002567号
    ありだ農業協同組合
    紀州みなべの南高梅
    (きしゅうみなべのなんこううめ)
    第5003836号
    紀州農業協同組合

    画像:特許庁・地域団体商標登録案件一覧より転載

    ●地域団体商標マーク

      地域団体商標権
       地域団体商標を取得した方々のブランド力向上等の取組を更に後押しするため、「地域の名物が地域団体商標として特許庁に登録されている」ことを示す証として特許庁が作成しました。
       本マークを継続して用いることで、地域ブランドとしての信用・信頼が蓄積し、地域団体商標自体のブランド力向上にもつながることが期待されています。

    地理的表示(GI)

     地理的表示(GI)保護制度は、日本の各地域の伝統的製法や気候・風土・土壌などの生産地等の特性によって、高い品質と評価を得ている産品の名称を知的財産として登録し、保護する制度です。
     <登録産品の登録例>
        
    登録名称
    登録番号
    産品生産者団体
    特定農水産物等の生産地
    夕張メロン
    第4号
    夕張市農業協同組合
    北海道夕張市
    山形ラ・フランス
    第99号
    山形県「ラ・フランス」振興協議会
    山形県
    市田柿
    第13号
    みなみ信州農業協同組合
    長野県飯田市、長野県下伊那郡ならびに長野県上伊那郡のうち飯島町および中川村

    画像:農林水産省・登録産品一覧より転載

    ■GI(地理的表示)マーク
      GIマーク
       登録された産品の地理的表示と併せて付すもので、産品の確立した特性と地域との結び付きが見られる真正な地理的表示産品であることを証するものです。

    著作権

     著作権とは、イラストやキャラクターなどの創作物を創作したときに、その創作物の完成と同時に発生する権利です。育成者権や商標権の知的財産権と異なり権利を取得するための手続きは不要です。
        
     商標登録がロゴマークやキャラクターの場合、創作者には著作権が発生しますので、著作権の権利譲渡や権利不行使の契約などの権利処理が必要になります。

    意匠権

     意匠権とは、物品の形状、模様・色彩などデザインに対する権利です。
        
     権利期間は出願日から25年(令和2年改正意匠法)です。特許取得を断念した製品であっても、デザインが特徴的な物品については意匠権として権利化できることもあります。
     <農業に関する物品の登録意匠の例>
        
    意匠に係る物品
    登録番号
    登録意匠
    草刈りかま
    第1197479号
    運搬車
    第1143361号

    画像:J-PlatPat意匠登録公報より転載

    特許権

     特許権とは、技術開発によって創作された新規な発明に対する権利です。
        
     権利期間は出願日から20年です。出願日から1年6月経過後に出願の内容が特許庁によって公開されます。
  • 改正種苗法について
  • ■優良品種の海外流出問題
     
      
     近年、我が国の優良品種が海外に流出し、他国で増産され第三国に輸出される等、我が国からの輸出をはじめ、 我が国の農林水産業の発展に支障が生じる事態が生じています。
      
    対策として、種苗法が改正されます。
    ■改正種苗法の概要(一部抜粋)
      
    ・登録品種の種苗の海外持ち出し制限
     →輸出国を指定し、指定国以外の国への種苗の持ち出しが制限されます。
    ・国内の栽培地域の制限
     →登録品種の栽培地域を指定し、指定地域以外での栽培(収穫物の生産)が制限されます。
    ・登録品種の自家増殖の制限
     →登録品種については、農業者による増殖は育成者権者の許諾が必要になります。
     
    詳細につきましては、こちらの「「改正種苗法について~法改正の概要と留意点~」令和3年1月:農林水産省をご確認ください。
     ←画像をクリックでダウンロードができます。
  • そのほかの農業政策
  • ■スマート農業の促進
     農業分野では、担い手の減少・高齢化の進行等により労働力不足が深刻な問題となっています。また、平均経営耕地面積が拡大しており、1人当たり作業面積の限界を打破する技術革新が必要となってきています。
     そこで、農林水産省では、「スマート農業」を促進しています。
     「スマート農業」とは、「ロボット、AI、IoTなど先端技術を活用する農業」です。「スマート農業」の普及に向け、農業者が安心してデータを提供できる環境を整備し、農業分野におけるビックデータやAIの利活用を促進しています。
    ■農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドラインの策定・公表
     農業データの提供・利用に関する明確なルールが存在していないことや、データの流出がノウハウ・技術の流出につながるおそれ等の懸念が、農業者によるデータ利活用に際しての足かせとなっています。
     そこで、農業分野におけるデータ利活用の促進、それを通じた生産性や品質の向上を実現するため、農業者が安心してデータを提供できる契約のルール作りを早急に進めるべく、平成30年12月に「農業分野におけるデータ契約ガイドライン」を策定されました。
     さらに、農業分野におけるAIを含むICTを活用する研究開発段階及び利用段階における契約のガイドラインを新たに追加し、「農業分野におけるAI・データに関する契約ガイドライン」として一体化し、令和2年3月に農林水産省より公表されました。
  • 弁理士の新しい役割
  •  弁理士法が改正され、農林水産関連の知的財産権(植物の新品種・地理的表示)に関する相談等の業務について、弁理士を名乗って行うことができる業務として追加されました。
  • 品種登録に関する助成事業
  • ■出願料等軽減措置
     出願料及び登録料(第1年から第6年まで)を3/4とする軽減措置が以下の法のもと実施されています。
           
    ・花きの振興に関する法律(平成26年法律第102号)
    ・福島復興再生特別措置法(平成24年法律第25号)
    ・地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律(平成22年法律第67号)
    ・米穀の新用途への利用の促進に関する法律(平成21年法律第25号)
    ・農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律(平成20年法律第45号)
    ■海外における品種登録出願経費の支援
     海外への品種登録出願に関する経費の支援事業があります。公募情報などはこちらのウェブサイトより詳細をご確認ください。

    知財農業の詳細につきましては、弊所までお気軽にお問い合わせください。